OBVが測るもの:出来高に向きを付けて積み上げた線
OBV(オンバランスボリューム)は、足ごとの出来高にプラスかマイナスの符号を付けて足し続けた累積線です。1960年代にジョセフ・グランビルが本で広め、今ではほとんどのチャートソフトに標準の指標として入っています。ふつうの出来高の棒は足1本ごとにどれだけ取引されたかを示すだけで互いにつながりませんが、OBVはその棒を終値の向きに応じて1本の線につなげます。そのため、出来高が上がった足と下がった足のどちらに多く乗ったかが、時間とともに線の傾きとして表れます。グランビルがこの指標に込めた考えは、出来高は価格より先に動くというものでした。大口の参加者が静かに買い集めると、価格はまだ動かなくても上がった足に取引が多く乗り、その跡がまずOBVに表れるという説明です。この説明は解釈の一つにすぎず検証された法則ではないので、この記事もその前提で見ます。出来高の基本、つまり出来高と売買代金の違いや急増の倍率は出来高分析の記事で扱い、ここではOBVという線1本を詳しく見ます。
定義と計算
OBVの規則は単純です。今の足の終値が前の足の終値より高ければ今の足の出来高を前のOBVに足し、低ければ引き、同じなら前のOBVをそのまま残します。たとえばOBVが1,000の状態で、終値が上がった足の出来高が300なら1,300になり、次の足で終値が下がって出来高が200なら1,100になります。足の中で価格がどれだけ動いたか、高値と安値がどこだったかは使わず、終値の向きと出来高だけを使います。期間を決める設定がないこともほかの指標と違う点です。トレーディングビューの標準OBVはチャートが受け取った最初の足から積み上げ始め、最初の足は比べる前の終値がないので0から出発します。線がぎざぎざすぎるときはOBVの上に移動平均を一本重ねて向きを見る人もいて、その長さは20本前後がよく使われますが、決まった標準はありません。この移動平均はOBVをなめらかに見せるだけで、計算に新しい情報を加えるものではありません。
- 終値 > 前の終値:OBV = 前のOBV + 今の足の出来高
- 終値 < 前の終値:OBV = 前のOBV − 今の足の出来高
- 終値 = 前の終値:OBV = 前のOBV
- 最初の足は前の終値がないので0から始まる
出発点が違っても形は同じ:値より傾き
OBVの数字そのものには、ほとんど意味がありません。どこから積み上げ始めたかによって、同じ時点の値が数百万になることもマイナスになることもあります。あるツールは直近500本だけを受け取って計算し、別のツールは数年分を受け取って計算すれば、同じ銘柄の同じ日でもOBVの数字はまったく違います。それでも二つの線の形、つまりどの区間で上がりどの区間で下がったかは同じです。出発点の違いは線全体を上下に平行移動させるだけだからです。そのためOBVは「今いくつか」より「最近どちらに傾いているか」を見ます。同じ理由で、違う銘柄どうしのOBVの数字を比べても意味がありません。比べたいなら、それぞれの銘柄の中で最近の高値・安値と今の位置を比べるか、一定期間にOBVがどれだけ変わったかをその期間の出来高の合計で割って比率に直すくらいが、まだ公平です。数字が0を超えたかどうかも出発点が決めることなので、基準線にはなりません。
読み方:価格と同じ向きかを見る
いちばん基本的な読み方は、OBVと価格が同じ方向に動いているかを見ることです。価格が高値を切り上げるときにOBVも高値を切り上げていれば、上がった足に取引が着実に多く乗っていると読みます。価格が安値を切り下げるときにOBVも安値を切り下げていれば、下がった足に取引が多く乗っているということです。このように二つが一緒に進む状態を、OBVがトレンドを確認していると表現することがよくあります。レンジではOBVもおおむね横に流れますが、このときOBVの傾きがレンジの中で少しずつ一方に傾くかを見る人もいます。読むときは、価格の高値・安値とOBVの高値・安値を同じ時点どうしで合わせる必要があります。目分量で2本の線を比べると見たい方向に読みがちなので、比べる高値や安値をまず価格で決めて、その足のOBVを探す順序が適しています。そしてOBVが価格と同じ向きだというのは、これまでの流れに取引が伴ったという要約であって、その流れが続くという保証ではありません(トレンドの記事)。
読み方:食い違いとOBVが先に超える場面
OBVでいちばんよく語られる場面は、価格とOBVが食い違うときです。価格は新しい高値を付けたのにOBVは前の高値を超えられなければ、上がったぶんに取引が付いてこなかったと読み、流れが弱まる手がかりと見ます。反対に価格は新しい安値を付けたのにOBVは前の安値の上にとどまれば、下がった足に乗る取引が減ったと読みます。こうした食い違いはRSIのダイバージェンスと同じ構造で、高値・安値をどう選ぶかで見えたり見えなかったりするという弱点も同じです(ダイバージェンスの記事)。グランビルが強調したもう一つの読み方は、OBVが価格より先に自分の高値やトレンドラインを超える場面です。価格はまだレンジの中なのに、OBVがそのレンジ期間の高値を先に超えれば、取引が一方に偏ってきているという解釈です。ただし食い違いや先行ブレイクが出た後も価格がしばらくそのまま進むことはよくあり、何も起きずにOBVが元の位置に戻ることも多いです。こうした場面は手がかりであって結論ではありません。
足1本の重みと、似た累積指標
OBVの規則では、終値がほんの少し上がっただけでもその足の出来高をすべて足します。一日中大きく下げてから、引け直前に前の終値より呼び値一つ分上で終わった足も、出来高がすべてプラスとして入ります。そのため出来高がふだんの数倍ある足1本が、終値のわずかな差でOBVの向きを長く変えてしまうことがあります。この粗さを整えようとする指標があります。累積分布線(A/D)は、終値がその足の高値と安値の間のどこで終わったかに応じて出来高の一部だけを足し引きし、終値が高値に張り付けばほぼ全部を、真ん中なら0に近い分を反映します。チャイキン・マネーフロー(CMF)は同じ考えを一定期間の中だけで合計して比率で示し、よくある初期値は20本です。これらの指標は足の中の位置を使う代わりに窓を反映できないなど、それぞれ別の弱点があります。どちらが優れているというより、同じチャートでOBVとこれらが違うことを言っているなら、足1本の終値の差がOBVを引っぱったのではないかを確かめる用途で使えます。
よくある思い違い
OBVを見るときによく起きる思い違いがいくつかあります。一つ目は、OBVが上がることを「買う人が多い」と読むことです。約定はいつも買い手と売り手が同じ数量で出会って成立するので、OBVが上がるというのは終値が上がった足の出来高が多かったという意味にすぎず、買いの数量が売りの数量より多かったという意味ではありません。二つ目は、OBVの数字をほかのツールやほかの銘柄と比べることです。前に見たとおり、数字は出発点が決めます。三つ目は、食い違いを必ず当たる予告として受け取ることです。後からチャートを見ると大きな転換の前の食い違いはよく目に付きますが、何も起きずに過ぎた食い違いは記憶に残りません。四つ目は、出来高のデータがどこから来たものかを確かめないことです。一つの取引所の出来高か、複数の取引所を合わせたものかによって、OBVの形が変わることがあります。以下は、OBVを見るときに一緒に思い出したい点です。
- OBVの上昇は「上がった足に取引が多く乗った」であって「買いが多い」ではない
- 数字は出発点が決める。ツールや銘柄どうしで数字を比べない
- 記憶に残る食い違いは当たったもの。過ぎ去った食い違いも多い
- どの取引所・通貨ペアの出来高かによって形が変わる
暗号資産と株式で違って見える点
暗号資産のOBVは取引所ごとに違います。同じビットコインでも、バイナンスのBTCUSDTのチャートのOBVにはその通貨ペアの約定だけが入り、ほかの取引所やウォン建ての市場、先物取引は含まれません。韓国国内のニュースでウォン建て市場だけがにぎわった日には、海外取引所のチャートのOBVはほとんど動かないこともあります。また暗号資産は24時間取引されるので、取引がまばらな明け方の時間帯の足も一つ一つ足し引きで積み上がり、短い足ほどこうした閑散とした足が増えます。株式は通常取引の時間の取引が中心で、寄り付きと引けの前後に出来高が大きいのがふつうの形です。サムスン電子やSKハイニックスのように取引の多い銘柄は日足のOBVが比較的なめらかですが、決算発表や指数への採用・除外がある日には、大きな出来高の足1本が線を大きく曲げます。株式分割があると、過去の出来高を新しい株数に合わせて調整したかどうかでOBVの形が階段のように変わることがあります。米国の指数そのものには出来高がないか、ツールごとに違う形で付いているので、指数のOBVは代わりに指数に連動する上場投資信託(ETF)の出来高で見ることが多いです。
リアルタイムのチャートで見るとき
リアルタイムのチャートでいちばん右の足はまだ閉じておらず、この足がOBVに与える影響がいちばん不安定です。進行中の足の出来高は時間とともに積み上がり続け、その出来高を足すか引くかは、現在値が前の足の終値より上か下かで決まります。そのため現在値が前の終値の近くで上下すると、そのたびにそれまでに積み上がった出来高のすべてがプラスとマイナスを行き来し、OBVの先端が上下に大きく跳ねます。足が終わる頃に出来高が多く積み上がっていれば、この揺れはさらに大きくなります。したがってOBVの高値や安値、食い違い、トレンドラインのブレイクといった判断は、その足が閉じてから行います。短い足では数秒のうちにOBVの先端が反対側に折れることがよくあり、その場面を見て取引が一方に偏ったと読むと思い違いになります。またツールが受け取る足の本数が増えたり減ったりすると出発点が変わって数字が急に変わることがありますが、これも形ではなく数字だけが変わったものなので、驚くことではありません。
実践の確認手順
OBVを読む前に以下の順で確かめると、よくある思い違いのかなりの部分を避けられます。一つでも当てはまれば、OBVから読んだ意味を一段下げて受け取ります。順序の要は、価格から始めることです。比べる高値と安値をまず価格で決め、次に同じ足のOBVを見て、最後に大きな出来高の足1本が線を引っぱったのではないかを出来高の棒でもう一度確かめます。出来高の棒とOBVを一つの画面に並べて表示しておくと、この最後の確認が楽になります。多くの銘柄を一つの表に並べるスキャナーで取引が一方に偏った銘柄がいくつも見える日も、たいていは市場全体が一緒に動いた結果で、銘柄の数だけの根拠にはなりません。足の長さを変えて同じ場面を見直すのも役に立ちます。1時間足で見えた食い違いが日足では見えないなら、その場面が含む時間が短いということです。OBVは価格が語ったことにどれだけ取引が伴ったかを付け加える補助的な情報であり、値動きの代わりにはなりません。
- どの取引所・通貨ペア、またはどの上場投資信託(ETF)の出来高か
- 足の長さと、ツールが何本目から積み上げたか(数字でなく形を見る)
- 最後の足が閉じた足か、進行中の足か
- 価格の高値・安値を先に決め、同じ足のOBVと比べたか
- 出来高がふだんの数倍ある足1本が向きを変えたのではないか
- 累積分布線のようなほかの累積指標も同じことを言っているか
限界と注意事項
OBVは終値の向きと出来高という二つの情報だけで作った指標です。足の中で何があったのか、誰がどんな理由で取引したのか、その取引が本当に別々の参加者どうしの取引だったのかは分かりません。出来高が水増しされた市場では、OBVもそのぶん水増しされます。グランビルの「出来高は価格より先に動く」という考えも、受け入れられる場面がある解釈であって、市場や時期を問わず成り立つ法則として確かめられたものではありません。過去のチャートでOBVが価格より先に折れた場面が印象的に見えるのも、たいていは結果を知ってからその場面を選んだからです。そのためこの記事は、OBVの傾きや食い違いを、どの時点で売買するかを決める基準として示さず、特定の読み方がこれからも通じるとは言いません。この記事は指標の意味と読み方を説明する教育用の資料であり、投資の助言ではありません。売買の判断と結果は各自にあります。
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